コラム
2022.04.05

グループホームの入居条件|住民票や介護度、費用について

グループホームの入居条件|住民票や介護度、費用について

介護サービスの専門家でなければ、高齢者施設の入居条件や入居費用に詳しい人は少ないです。実際に親や親戚が認知症などになってから、グループホームなど高齢者施設を調べる人も多いでしょう。本記事では以下を中心に解説します。

・具体的なグループホームの入居方法とは
・両親に合うグループホームの選びかたとは
・グループホームと一般的な高齢者施設の違いは

具体的な月額費用から、グループホームのメリットなどを解説しました。高齢者施設に詳しくない人に向けてまとめていますので、ぜひ最後までお読みください。

グループホームとは、認知症高齢者専用の施設

杖をついて歩く男性と介助する人

グループホームは認知症と診断された高齢者が入居対象になる施設です。少人数(5~9人)を1~2ユニットとした共同住宅であり、専門知識と技術を持つスタッフが24時間常駐します。少人数制で自由度が高く、家事や清掃、洗濯なども高齢者自身で行い、職員がサポートします。各々に割り振られた役割をこなすことで自己肯定感が向上し、生活のリズムも安定します。入居者同士で自然と顔なじみになるため、慣れ親しんだ仲間と落ち着いた日常を過ごせます。

グループホームの入居条件

グループホームの入居条件

小規模な施設で施設数も多くなったため、比較的身近に感じられるようになったグループホームですが、入居条件は他の介護施設とは少し異なり、介護度以外にもいくつかの条件があります。入居にあたっての、事前の確認が必要な条件を紹介します。

要支援2以上

グループホームの入居には「要支援2以上」の介護認定が必要です。介護認定は市区町村の役場や地域包括支援センターなどで相談ができます。介護認定は「要支援1から要介護5」まで7段階あり、要支援2は要支援1より介護度が高い人を指します。具体的に要支援2に該当する人は「日常生活は主に自分でできるものの、立ち上がりや歩行など、運動能力に若干の低下がみられる状態」です。グループホームで適切なサポートを受けながら過ごすことで、残存機能を活かした生活ができます。

認知症の診断

グループホームは認知症高齢者が対象の施設であり、医師から「認知症の診断書」の発行が必要です。そのため物忘れ、気分の波が激しいなど、認知症の症状が見られれば、主治医に相談してください。場合によっては専門の医療機関を紹介されます。直接総合病院に受診される場合、精神科や脳神経外科など、病院によって診療科目が異なるケースがあります。あらかじめ病院に問い合わせてください。

住民票のある市町村

グループホームは介護保険制度の定める地位密着型サービスに位置付けられています。地域密着型サービスとはその名の通り、住み慣れた街での生活を支援するためのサービスです。そのため、グループホームの入居者は施設のある市町村に住民票がある方に限定されます。特養や介護付き有料老人ホームでは入居時に住民票を移して入居することが可能ですが、グループホームについては住民票を移してから一定期間の居住実績が無ければ、介護保険での利用を認めない市町村があるため注意が必要です。

グループホームの選び方、入居方法

グループホームでの食事の様子

グループホームに空きがあっても、すぐに入居できるとは限りません。あらかじめサービス・ケアの内容・施設の方針などの情報を集めておきましょう。施設見学では聞きたいことをメモしておき、疑問を解消してください。

グループホーム選びのポイント

グループホームごとの違いは、主に以下の通りです。

・金銭面(月額費用や退去費用が施設ごとに違いがある)
・医療体制(看護師の配置義務はないため、医療と連携・緊急時の対応や持病管理の確認)
・スタッフ(ケアスタッフの配置人数や働いている様子、対応の受け答えの態度など、十分な介護サービスを受けられるか)
・入居者の様子(トラブルを起こしておらず、穏やかに過ごしているか)
・立地(多くの介護施設では面会時間が決められているため、足を運びやすい施設か)

初めての入居であれは誰でも不安になりますが、ショートステイと呼ばれる短期入居も可能であり、実際にグループホームの介護サービスと実生活を体験できます。入居される本人も、施設の雰囲気や入居者の相性も確認できるため安心できます。また、グループホームのホームページから資料請求できる施設もあり、インターネットで情報が集められます。しかし、施設の管理者などから直接話を聞くことは大切なポイント。入居予定の本人が見学できない場合、スマホのカメラ(写真の可否は施設に確認が必要)で記録に残すことも手です。

入居までの流れ

グループホームの入居までの流れ

グループホームの入居までは以下の流れが一般的です。

1:グループホーム見学
2:入居の申し込み手続き(認知症の診断書や入居に必要な書類を提出)
3:入居判定(施設側で受け入れの可否を判断)
4:入居契約(確認事項の説明、入居契約書の記入)
5:入居(使い慣れた品の持ち込み)

グループホームを見学後は、直接施設に申し込みをしてください。入居の書類を提出後は入居希望者の心身の健康状態・安全面など総合的に考慮して入居を判断されます。問題がなければ契約の手続きに入りますが、入居金や退去費用はグループホームごとに異なるため確認が必要です。入居時は大型の介護用具ではなければ持ち込みが可能ですので、高齢者本人が安心して生活するために、使い慣れた品物を持ち込みましょう。

入居を断られる条件の例について

グループホームの様子

グループホームは他の介護施設と異なり、共同生活がポイントとなる施設です。入居に際しては他の入居者との生活に支障がないことが求められます。そのため、
 ・暴言や暴力をふるう方
・他人と接することを極度に避けたがる方
・寝たきりや介護度が重く、自分では食事や排泄ができないレベルの方
などは共同生活に適さないと判断され、入居を断られがちです。この状態面での判断は他の入居者の状態との兼ね合いや、それぞれの施設の運営方針により異なるため相談が必要です。多くの施設ではその判断のため体験入居をして対応可能か判断しています。また、次項に挙げる退去条件に該当するような場合も、受け入れ困難であると判断されるので注意が必要です。

退去条件について

グループホームの退去条件

グループホーム入居後、退去が必要となるケースがあります。入居後の介護状態の変化により、グループホームで対応できない状態となる場合です。ここではグループホームでの生活を継続できず、退去となる理由について説明します。

介護度の改善

グループホームの入居条件は要支援2以上の介護度が求められるため、認定調査の更新で要支援1以下と判定されてしまうと退去しなければなりません。グループホームでの生活で、精神的に落ち着き一見、認知症が無くなっているかのように見えるケースがあります。そのような方が要支援2や要介護1のような状態のときは注意が必要です。なお、認定調査の結果については不服申し立てが可能です。
※多くの介護施設では認定調査に際して施設職員が立ち会います。認定調査の結果で退去が必要となるような介護度であると、誤った判断とならないように、施設職員は日常での入居者の認知症症状や介護が必要な様子を伝えるなどの対応をしています。

医療依存度・介護度の重度化

高齢である入居者は何らかの薬を日常的に服用している場合が多く、また気温や気圧などにより体調への影響を受けやすい状態にあります。入居中に入院となるようなケースも少なくありませんが、退院に際して医療的なケアが必要となる場合があります。グループホームでは看護師の人員配置が無いためこのことが原因で、グループホームで生活することが困難になる場合があります。また、医療的なケアは必要なくとも、介護状態が悪化し、食事の自力摂取ができなかったり寝たきりになったりといった場合、グループホームでは受け入れ困難と判断される場合もあります。入院中や退院に際しては施設と病院は連絡を取り、状態を確認しながら今後の生活について検討していますが、退院後の施設として特養などの別の施設を差が無さければならないこともあります。いずれの場合もそれぞれの施設により受け入れ可能となる判断基準は異なるため、施設と相談しながら対応する必要があります。

自傷他害行為

認知症の症状によっては性格が攻撃的になってしまうなど、精神面での変化が見られる場合があります。これが進行して暴力・暴言や自傷行為が止まらないような場合、退去を要請されることがあります。施設職員も症状が収まるように接し方や環境などの対応を検討したり、医師に相談して薬を処方してもらうなどの対応をしますが、必ずしも状態が安定するとは限りません。グループホームでは身体拘束を排除する方針であるため、行動制限等は基本的に行えないため、これ以上の対応が困難だと判断された場合は退去を要請します。そのような場合は施設と一緒に次の受け入れ先を探すことになります。

月額費用の目安

グループホームの月額費用の目安

要支援・要介護度によって月額費用に差があるものの、約10~20万円が相場になります。具体的な内訳費用は以下の通りです。

・家賃
・食費
・水道光熱費
・介護サービス費(介護度が高くなると加算額が増加)
・サービス加算(施設の介護体制によって加算額が変動)
・雑費(介護用おむつ、理美容費、日用品など)

介護サービス費は介護保険が適用される一方で、雑貨は自費になります。おむつやティッシュなど、必要な日用品を持ち込むことで費用を抑えられます。

グループホームに入居するメリット・デメリット

グループホームに入居までの流れ

グループホームでは入居者同士が協力して家事などを行うため、自宅に近い環境で生活できる施設です。半面、手厚い医療ケアを受けられるわけではありません。ここではグループホームのメリットとデメリットをまとめました。

メリット

一般的な高齢者施設に比べて少人数制のため、加齢により記憶力の低下がみられても、スタッフや入居者の顔や名前を覚えやすく、落ち着いた生活が送りやすい環境です。社交的な人同士で日常的に趣味を楽しんだり、スタッフを交えたレクリエーションをおこなったり、メリハリのある生活を送れます。また、グループホームは認知症高齢者が入居対象であり、認知症の専門スタッフが常駐しています。そのため、入居者が心理的に不安定になっても、高い対応力に期待できます。

デメリット

定員が少人数のため空きがなく、入居待ちの期間が発生するケースがあります。医療体制面では、看護師の配置義務がないため、医療ケアの提供が必要になると他の高齢者施設などに退去しなければいけません。また、入居に際してはそれまで担当していたケアマネジャーが施設専属のケアマネジャーに変更となると共に、デイサービスなど利用していた介護保険サービスを利用することができなくなります。特に歩行器や車いすなどの福祉用具をレンタルしていた場合は、保険適用でのレンタルができなくなるため注意が必要です。福祉用具が必要となる場合は、安価でレンタルや購入できるところが無いか事前に相談することをお勧めします。

特別養護老人ホーム・有料老人ホームとの違い

面談の様子

一般的な老人ホームは看護師が配置されていたり、終身で入居ができたりします。しかし、1フロアに数十人の高齢者が過ごされ、自立度もまちまちです。とはいえ、施設によっては夜間も看護師が常駐しており医療面では安心感があります。一方グループホームは、入居者の自立支援に重きを置いています。少人数の顔なじみ同士で家事などを協力しながら、専門スタッフのサポートを受けられるため、認知症の進行を遅らせる効果も期待できます。

状態に合わせてグループホームの選択を

グループホームの様子

グループホームは小規模な施設であり、地域密着型サービスの名が示す通り自宅近くの身近なところでも見かけるようになりました。そのため、老人ホームを選ぶ際の選択肢に入りやすいのではないでしょうか。ストレスを極力排除し、落ち着いた環境の中、自分のペースで暮らすことができるグループホームは、認知症の高齢者にとって、特に効果的で安心できる住まいだと言えます。しかし、グループホームは本来「体は元気だけれど認知症により生活に支障が出ている」方を主な対象とした施設であるため、状態によっては適さない場合もあります。入居条件とはその目安と言い換えることもできます。介護状態に合わせて施設を選ぶことが、入居者本人にとっても家族にとっても、毎日を安心して過ごすためポイントだと言えます。

グループホーム_静岡

この記事の監修者

増田高茂増田  高茂(社会保険労務士/介護支援専門員/介護福祉士/第二種衛生管理者)2004年に株式会社アクタガワに入社。派遣事業の営業を経て、介護現場に。介護福祉士・介護支援専門員の資格を取得し、多くの介護事業所の管理者を歴任。介護保険改正に際しては制度化されたばかりの、小規模多機能型居宅介護、夜間対応型訪問介護などの立ち上げにも携わる。その後、介護付き有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の施設長も務める傍ら、社会保険労務士の資格を取得。介護保険分野を含めた社会保険全般に専門知識を活かし、現在は、介護保険サービスの品質とコンプライアンスの管理部門の責任者業務に就いている。

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